AWSを始めとするクラウドサービスにおいて、料金の課金形態の理解は必要不可欠です。
それはこれらのクラウドサービスが使った分だけ料金が発生する「従量課金制」によるためです。
AWSに関わるエンジニアや営業マンにとって、予算の策定や見積書の作成などは非常に重要となります。
本記事では、AWSの課金体系について、その本質を理解するためのコツをご紹介します。
AWS課金体系を理解すべき理由

はじめに、AWSの課金体系を理解すべき理由についてお話しします。
見積もりに利用する
企業としてAWSシステムの導入を考える際、正確な見積もりはプロジェクトの承認プロセスや予算策定に不可欠です。
AWSの多様なサービスごとに異なる料金体系を理解することで、予算策定や資源の割り当てがスムーズに行えます。
AWSではPricing Caliculatorが提供されていますが、オプションや設定項目数が多く、初心者にとって正確な見積もりを出すのが難しい場合もあります。
想定外の料金になることを防ぐ
AWSでサービスを利用する際には、想定外の高額請求を避けるために、課金体系を正確に理解することが重要です。
特に、「従量課金制」の特性を持つサービスでは、予想以上のトラフィックやリソース使用により、料金が急激に増加する可能性があります。
学習用に個人でサーバーを立てた場合、インスタンスサイズを間違えると月に数十万円の請求がきたという話もよく耳にします。
初見のサービスでも金額感が判断できるようになる
AWSは200以上のサービスが提供されており、日々アップデート・プライスダウンされています。
さらに、システムによって想定トラフィックやアーキテクチャは異なるため、システム毎に金額も変わってきます。
他にも、顧客との打合せ・ミーティングの際に「RDSをAuroraにしたらどの程度金額が変わるのですか?」や「今ざっくり金額感って分かりますか?」などの質問が飛んでくることもあるかと思います。
課金体系を理解していると、新しいサービスを見たときに、そのコスト構造を素早く把握し、どの程度の費用がかかるかを予測することができます。
AWS課金体系の種類とは

続いて、AWS課金体系の種類についてご紹介します。
全てのサービスにおいて従量課金制という原則は変わりませんが、サービスによっては無料であったり、トラフィックやGiBなど単位が異なるサービスがあります。
時間・利用量に対する課金
AWSの多くのサービスでは、時間や利用量に応じて課金されます。
例えば、EC2(Elastic Compute Cloud)では、インスタンスを稼働させている時間に応じて料金が発生します。また、S3(Simple Storage Service)のようなストレージサービスでは、保存しているデータ量に応じて料金が計算されます。
この課金方式の理解は、リソースの効率的な利用とコスト削減に直結し、特に大規模なアプリケーションを運用する際に重要です。
呼び出し回数による課金
一部のAWSサービスでは、サービスの呼び出し回数に応じて課金されます。
Lambda(サーバレスコンピューティングサービス)はその代表例で、関数の呼び出し回数と実行時間に基づいて料金が計算されます。
このような課金体系は、コストを予測しやすい反面、予期しない大量の呼び出しが発生すると、料金が急増するリスクもあります。
適切な監視とアラート設定が、コスト管理において重要になります。
データ転送量
AWSでは、データ転送量に基づいて課金されることもあります。
インターネット経由でデータを受信する際には、転送量に応じた料金が発生します。
データ転送の料金は、特に大量のデータを扱うアプリケーションや、多くのユーザーがアクセスするウェブサイトを運営する場合に重要です。
データの最適化やキャッシュ戦略を利用することで、これらのコストを効果的に管理することが可能です。
課金料金Tips

最後にAWSの課金料金Tipsをご紹介します。
これを理解すれば、AWSの「料金感覚」が分かるようになり、未知のサービスでもある程度の料金が予測できるようになるはずです。
節約できないサービスがある
一般的に開発環境や夜間帯に利用しない社内システムなどはEventBridgeやLambdaを利用してEC2などの一時停止を行います。
しかしAWSには、基本料金が固定されており、節約が難しいサービスも存在します。
例えば、ELBのような負荷分散サービスは、一時停止機能を有していないため月額料金を節約することができません。
他にNAT GatewayやWAFなども固定で料金が掛かるサービスのため注意が必要です。
サーバー vs サーバーレス
AWSではサーバーを利用するサービスとサーバーレスサービスというものが存在します。
例えば、AuroraとAurora Serverless、ECS on EC2とFargateなどがあります。
サーバーとサーバーレスを比較した場合、動作するアプリケーションのパフォーマンスとしては大差はありませんが、料金においては費用が異なります。
基本的にサーバーレスサービスの方が料金が高いと考えておきましょう。
これはサーバーの管理部分をAWSなどのクラウド事業者が責任を負うためとなります。
ただし、Aurora Serverlessはデータベースの問い合わせ数が多い場合は、Auroraを利用した場合の方が料金が安くなる場合もあるため注意が必要です。
料金の見積もりが難しいサービス
一部のAWSサービスでは料金の見積もりが難しいサービスもあります。
その一つがETL処理を得意とするGlueです。
GlueはDPU(1DPU当たり4vCPU/16GBのメモリ)という単位の処理時間ごとの課金となります。
例えば、1Tのデータを変換しようとした際、2DPUで処理する時間というのは人間には算定しかねる問題です。
また、AthenaなどもSQLクエリの処理時間については人間には予想をすることができません。
これらのサービスの見積もりを作る際は、実際にPoCとしてデータ処理に対する時間を測定するしか方法がないのが実情です。
料金をほぼ無視してもよいサービス
AWSには、低コストで利用できるサービスも多数あります。
例えば、S3のようなストレージサービスは、少量のデータ保管では非常に低料金で利用できます。
また、AWS Lambdaのようなサーバレスサービスは、小規模な利用では無料枠内で運用できることが多く、コストを大幅に抑えることが可能です。
個人規模や数百人程度が利用する規模のシステムでは料金はほとんどかからないため、そこまで気にする必要はないでしょう。
まとめ
AWS料金体系は多岐にわたり、初心者の方には複雑に感じることもあるでしょう。
しかし、基本的な課金の仕組みを理解すれば、予算に合わせた適切なサービス選定や効率的なコスト管理が可能になります。
AWSを用いたプロジェクトでは、常にコストを意識し、適切なリソース管理を行うことが重要です。
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AWSの効果的な学習方法は?

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