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固定IPアドレスはなぜ高いのか、元ISPエンジニアが解説!

フリーランスやIT企業では、インターネットプロバイダーのネット契約で固定IPアドレスオプションを利用している場合があると思います。

固定IPアドレスとはどのようなものなのでしょうか。

今回は元ISPエンジニアが固定IPアドレスについて解説します。

固定IPアドレスとは

staticIP address

固定IPアドレスは、インターネットに接続する際に割り当てられるIPアドレスが変更されないアドレスとなります。

一般的には、割り当てられたIPアドレスは動的に変更されてしまいます。

例えば、一定時間が経過する、もしくは利用していない時間が長い、ONUなどの終端装置の電源をオフにしている場合に変更されます。

IPアドレスが変更する時間やルールはISPによって異なります。

DHCPという仕組みでIPアドレスが動的に変わりますので、詳しくはDHCPで検索してみてください。

固定IPアドレスの利用用途・メリット

固定IPアドレスの利用用途

固定IPアドレスの利用用途・メリットをご紹介します。

ネットワーク機器に固定IPアドレスを設定する

ネットワーク機器に固定IPアドレスが利用されます。

監視カメラ

ビジネス環境では、セキュリティを強化するために監視カメラの導入が一般的です。

監視カメラの仕様として、固定IPアドレスが必要になります。

動的IPアドレスのように変化しないため、常にカメラにアクセスすることが可能です。

動的IPアドレスの場合、アドレスが変わるたびに設定をし直さなければなりません。

プリンター

オフィス環境では、プリンターをネットワーク上で共有することがあります。

基本的にはローカルIPで固定をしますが、社外との通信が必要な場合はパブリックIPで固定を行います。

サーバー

企業ホームページやECサイトを動かすには、サーバーが必要です。

サーバーに固定IPアドレスを設定することで、常に同じアドレスでサーバーにアクセスできます。

社外作業で固定IPを利用する

社外作業をする場合にも固定IPアドレスが必要な場面があります。

外部企業でネットワーク関係の作業をする

フリーランスエンジニアやIT企業の場合、外部企業先のネットワーク内に入ってサーバー設定を行う必要があります。

企業ネットワークでは、基本的にファイアウォールなどで外部からのアクセスを遮断しているため、基本的にはネットワークに入ることができません。

しかし、それでは作業ができないため、外部企業先の担当者が作業時のみIPアドレスの許可を行ってくれます。

その許可するIPアドレスとして固定アドレスを提示するのです。

動的アドレスでも問題はありませんが、アドレスが変わるたびに外部企業側で設定変更作業が入り、セキュリティ的にも危険であるため、固定IPアドレスの方が望ましいです。

クラウド環境で作業をする

クラウドサービスを利用する場合、セキュリティ上の要件から固定IPアドレスを使うことが必要なケースもあります。

上記の外部企業での作業と同様の理由です。

AWSの場合はSG(セキュリティグループ)のSSHログイン許可設定があり、固定IPアドレスのほうが利便性が高くなります。

固定IPアドレスはなぜ高い?

固定IPアドレスが高い理由

固定IPアドレスの利用用途やメリットについては理解できたと思いますが、実際にオプション契約をすると固定IPアドレスはかなり高額です。

ここでは、固定IPアドレスがなぜ高額なのかを解説します。

固定IPアドレスは1IPアドレス、1万円程度が相場

固定IPアドレスは、1つあたり月額1万円程度の費用がかかることが一般的です。

料金はインターネットプロバイダーによります。

また、複数の固定IPアドレス契約をすることで割引になるプロバイダーもあるようです。

他にも、AWSのElasticIPの料金値上げが発表されました。

このように、固定IPアドレスは今後も値上がり傾向になると思われます。

IPv4アドレス枯渇により価格が高騰

固定IPアドレスが高額な理由は、IPv4アドレスが枯渇しているためです。

IPv4アドレス(〇.〇.〇.〇/24のような4桁の数字で構成されるIPアドレス)は既に全アドレスが払い出されており、世界中でインターネットプロバイダーによるIPアドレスの取り合いが行われています。

そのため、世界規模でIPv4アドレスの価格が高騰しているのです。

ISPのIPv4事情

ここでは、ISP(インターネットサービスプロバイダー)目線のIPv4事情をご紹介します。

固定IPはDHCPが利用できない

固定IPアドレスを使う場合、ISP(インターネットサービスプロバイダー)が提供する自動割り当てのDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)が利用できません。

基本的にISPはDHCPによって利用していないIPアドレスは他のユーザーに割り当てをしてIPアドレスを節約しているのです。

固定IPアドレスを利用者につけることは、ISPにとってはそのアドレスが24時間365日使えなくなるため、料金を高く設定せざるを得ないのです。

所持しているだけで月額費用がかかる

実は、固定IPアドレスは保持するだけで月額料金が発生します。

IPv4アドレスを管理しているJPNICへ月額維持費用が固定でかかってしまいます。

料金の算出方法はJPNICのホームページで紹介されています。

1IPアドレス当たり数百円程度となります。

保持していたIPアドレスもすぐに枯渇する

現在のIT・DXの時代では1人で複数台のスマートフォンやIoT機器を所有しているため、IPアドレスがさらに必要な時代となっています。

IPv6アドレスが既に利用できますが、IPv4アドレスが未だ使える状態にあることから、あまり普及されていません。

また、IPv6対応していないホームページやオンラインゲームで同期ができないなどの不具合もある状態です。

そのため、ISP側もIPv4アドレスを随時購入しているのですが、限られた資源であるため限界があります。

現在の1IPアドレス購入費用は3,000円から4,000円程度であり、一度に/24や/20の単位で購入するためかなりの費用負担となっています。

よって、固定IPアドレスの利用は高額になってしまうのです。

おわりに

固定IPアドレスは、ビジネス環境や特定の用途において重要な役割を果たします。

監視カメラやサーバー、プリンターなどのネットワーク機器に固定IPアドレスを設定することで、セキュリティや遠隔アクセスの利便性を向上させることができます。

また、社外での作業やクラウド環境での利用でも固定IPアドレスが要求されるケースがあります。

一方で、固定IPアドレスは高価であることも事実です。

IPv4アドレスの枯渇により価格が高騰しており、ISPのIPv4事情も影響しています。

固定IPアドレスの導入を検討する際は、そのメリットと費用をよく考慮し、必要な用途に合った適切な選択を行うことが重要です。

  • この記事を書いた人

KAITech

大企業/中小企業/ベンチャー企業を経験
AWS/ネットワークのエンジニア
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